今年は合衆国大統領選挙の年です。民主党カマラ・ハリス対共和党トランプの対決を、日本を含め世界の人々が注視するこの年、しかも日本では10月4日公開というわけで、映画界のオクトーバーサプライズ(大統領選の年、10月に発生する政治的大事件)と言えなくもない・・・・と期待しつつ、『シビル・ウォー アメリカ最後の日』試写会に参加してきました。
ド派手な戦闘シーンがPR動画で配信されてますが、物語としては、アメリカで合衆国大統領が暴走し独裁者化、これに反発する各州の州兵軍がワシントンを支配する政府軍と戦闘するという内戦下で、劣勢となっている大統領に独占インタビューを敢行すべく、ニューヨークからジャーナリスト4人がワゴン車に同乗してワシントンに向かうというストーリー展開です。つまりこれは、70年代アメリカン・ニューシネマで良く出てきたロードムービーに近い作品でした。道中で遭遇する殺戮に愕然とする様子など戦争ドキュメンタリー風なシーンと、職業倫理と道徳の間で揺れるジャーナリスト達の苦悩と狂気が交錯するなかで、主人公達はクライマックスとなるホワイトハウス攻防戦へ突入していくのでした。大統領直撃独占インタビューの目標は果たされるのか?それは観てのお楽しみ・・・ですが、全体的に暴力と殺戮、銃声と爆発に満ちた暗い映画で、楽しめません。内戦に至る状況説明も断片的で、どうやらドナルド・トランプを模した大統領が暴走して(FBIを解散させたとか語られているのもトランプぽい)政府軍を率いて独裁体制を敷くらしいですが、これに対抗する二大勢力がカリフォルニア州・テキサス州の州兵軍(?)だけというのも納得できません。アメリカで内戦が激化するとしたら、接戦州である中西部各州(ウィスコンシン、ノースカロライナ、ペンシルバニアなど)も最前線として加えて欲しかった。
主演女優はキルスティン・ダンストですが、DCコミック映画『スパイダーマン』(サムライミ3部作)時代の美人ヒロイン役は完全に棄てて、戦場取材PTSDで疲弊し、重くなった体を引きずりながら取材を続ける熟練敏腕女性ジャーナリストを重く演じています。取材に同行するNYタイムズの老練記者も含め、これら疲弊した記者二人に待ち受ける運命の描き方も、70年代アメリカン・ニューシネマを彷彿とさせました。見終わった後に残る重い感慨は、まさしく70年代の傑作『バニシング・ポイント』を連想させました。もちろん若い人には通じないですよね。個人的には作品評価は☆3つ(☆5が満点)です。