ブロードバンド時代でもページは軽いほうがいい
「ブロードバンド催眠術」に企業ウェブマスターは麻痺。でもユーザーは・・・
2002年度において、日本のブロードバンド回線環境はスピード・コストにおいて世界一になったらしい。さて、駅前ブロードバンド販売拡張団も見慣れた昨今、ウェブ制作現場においても「ブロードバンドムーブメント」が沸き起こっている。
都心のインテリジェンスビルにオフィスを構え、受注金額グラフを積み上げることに残業も厭わない熱心な大手ウェブサイト制作企業は、ホームページのアニメーションをより長時間で高尚な芸術に作り上げ、無味乾燥なコンテンツに高度な装飾を施すことで成功を収めつつあるらしい(オフィス賃貸料の支払いもできる!)。
しかし、「FlashアニメーションとSKIPボタン」が企業のオンライン収益にどう作用するかを顧客に理解させることはとても困難だ。そんな時、「IT業界特有の催眠術」は登場するのである。
「IT業界特有の催眠術」とは、古くはSIPS、SEOなどのキーワードを使いまくって顧客に「遠くを見せる」ことだった。最近では、「ブロードバンド催眠術」が最先端の技術である。ウェブ制作企業が得意とするブロードバンド催眠術は、クライアントとの打ち合わせの最中にしばしば目撃される。例えば以下のような場面で・・:
- クライアント企業のWEBマスター:
- 『この企画書によると・・トップページのフラッシュアニメーションがかなり凝ってるねえ。これはどういうコンセプトで?』
- ウェブ制作企業の営業担当者:
- 『御社のブランディングを意識して、ホスピタリティをテーマにした動画です。オンラインでの御社のプレゼンスを高めるために用意してみました』
- クライアント企業のWEBマスター:
- 『他の画像データと合わせてページのファイルサイズが500キロバイトか・・・たしかサイトを立ち上げた2年前には「8秒ルール」なんて言われたと思ったけど、ページが重過ぎないかなあ・・?』
- ウェブ制作企業の営業担当者:
- 『ブロードバンド時代ですから、画像ファイルの重さなんて誰も気にしませんよ。かなり凝った動画でも大丈夫です。ユーザーは「つなぎっぱなし」なんですから!』
ちょっと考えてみて欲しい。「ブロードバンド時代だからページが重くても気にならない」というユーザーは、重いページを歓迎しているのか、我慢しているのか?
現実世界の例を見てみよう。長距離ドライバーが高速道路を使う動機は「目的地まで速く到着するから」であって、「たくさんの車と出会うから」ではないはずだ。
商用サイトにおいて、ユーザーは目的の達成に集中している。アート気取りのFlashアニメーションが始まるスプラッシュページや、強制的に表示される巨大画像は(ブロードバンド環境においても)歓迎されることはない。それは高速道路において、渋滞が歓迎されないのと同じ理由である。
確かに、日本国内のネット環境は急速に整備されつつある。2002年末の調査では1,955万人がブロードバンドを利用しているらしい。数字にするとすごい人数だが、自宅でネットを利用しているユーザー全体の比率で見ると、29.6%に過ぎない。その一方で、44.9%がアナログ回線でダイアルアップ接続している事実は見逃せない。「誰でもブロードバンド」はまだまだ大げさな売り文句かもしれないのだ。
参照:情報通信白書:第1章 特集「日本発の新IT社会を目指して」
「ブロードバンド催眠術」感染を防止する
ウェブサイト製作者は、このような「ブロードバンド催眠術」から身を守らなければならない。しかしステキなオフィスのパーテイションに隠れてみても、この催眠術から逃れるのは難しい。あなたの上司はすでに患者かもしれないので頼れない。そんなときは、ネット上の便利なツールを使ってみよう。
OptiView社の「PageRacer」は、アナログ56Kモデムでのウェブページ表示速度を擬似体験することができるスグレモノだ。これを使って、かつて夜中にダイアルアップで見た星降る夜空の画像を思い出すのも楽しい。
結び:「ブロードバンド催眠術」動画広告の販売に効果あり?
ブロードバンド催眠術は、広告代理店の売り込みにおいても活躍している。例えば以下のような場面で:
- ウェブ広告代理店のAE(アカウントエグゼクティブ):
- 『新しいタイプの動画広告の案内に参りました。是非御社でも出稿を検討してください!』
- クライアント企業:
- 『動画広告なんてわざわざ見るかな〜?』
- ウェブ広告代理店のAE:
- 『ブロードバンド時代ですから誰でも動画を見れますよ!』
ブロードバンド時代だから誰でも動画広告だって?動画広告がそんなに注目されるとしたら、まず出稿すべきなのは当の広告代理店だろう。